〇□△ハウス
東京都江東区潮見1-5-6 アライハウスT
おかしな名前だが正式名称であるらしい。「まる・かく・さんかくハウス」と読む。
雑誌新建築1988年4月号の記事によると、設計者の石井和紘は賃貸アパートを設計するに当たり、「「おとこおいどん」のサルマタケの群生するアパートを江東のシャンボールにしよう!」と発起して設計したのだそうだ。
「おとこおいどん(男おいどん)」は、四畳半一間のボロアパートに暮らすさえない若者・大山昇太(おおやまのぼった)を主人公にしたマンガ(1971-3)で、松本零士の出世作だ。昇太はやることなすことうまくいかず、ろくに洗濯もしない下着に生えたキノコ(サルマタケ)を食べることもあるような、貧乏暮らしをしている。
シャンボールはフランスにある中世のお城で、屋上に林立する無数の列塔が特徴的だ。屋上に載る円柱、四角柱、円錐はそれをイメージしている。
扇状に配置された部屋のバルコニーが弧を描くファサードは明るい青緑色に塗られ、特別感のあるリッチな雰囲気を醸し出している。賃貸アパートで暮らすおいどんたちに王宮の奢りを持たせ、誇りをもって暮らしてほしい。それが作者のメッセージなのだ。
1987年竣工。
ちなみに、物件情報は2DK・35m2で家賃88,000円/月。おいどんの部屋よりずっといい。