二 コ ラ
東京都中央区築地1-1-1 中央区役所
二コラは区役所の玄関をじっと見つめている。
仕事が終わって出てくる恋人を待っているのか。それとも単なる暇つぶしで出入りする人を見ているのか。暇つぶしと言ったって、こんな役所の前で何をしているのだろうか。
多分真相は、アトリエでポーズをとる時に正面を向くのが気まずくて目をそらしているという感じなんじゃないかとは思うけど、ここに置かれるといろいろ考えてしまう。
そう言えば二コラは以前、横浜の馬車道あたりの道端でニケと立ち話をしていたのを見たことがある。そのニケ(NIKE)は中央大橋に近い隅田川べりでSUMMERと題された少年と一緒にいるはず。
「青春っていいわね」「わたしにもいい人が現れないかしら」なんて思いながら黄昏れているのかな。それにしても、こんなにがっちりと周りを囲われてしまったら声をかけにくいよね。
例によって朝倉響子の作品を見ると、いろいろな妄想がわたしの頭の中に浮んでくる。