淀橋咳止地蔵尊
東京都新宿区北新宿2-1-2
久しぶりに西新宿に来た。
新入社員の頃から、何度か西新宿に職場があった。「その頃に比べてずいぶんと様子が変わったなぁ」と口には出してみるが、不思議なことに、多少ビルの本数が増えたとはいえ高層ビルが林立する景色にはそれほど違和感がない。あいかわらずスーツ姿の人が多く、飲食店や小売店の少ない生活感のない街だ。
その一角に、場違いな雰囲気で小さなお堂が建っていた。以前は柏木と呼ばれた周辺のまちを見守ってきたお地蔵さんが祀られている。
堂内の由緒書きには平成18年(2006)の再開発事業でここに移されたとあり、傍らの石碑には昭和26年(1951)の道路改正で遷座したとある。何度も繰り返される都市開発で居場所を追われながらも、土地の鎮守として大切にされてきたのだ。
この先、まだまだ街は変わっていくことだろう。よそ者が増えて、土地の歴史も忘れられていくのかもしれない。いい薬が開発されて、お地蔵さんに咳止めの願をかける人もいなくなった。
それでも懐かしい記憶をとどめるために、お地蔵さんはこれからも場所を変えながら引き継がれていくことだろう。
(移転の記) : 昭和26年(1951) | 平成18年(2006)