2024年4月11日(木)

夜 の 森

福島県双葉郡富岡町夜の森北 / 夜の森南

壁画

「夜の森(よのもり)」という不思議な地名を知ったのは、東日本大震災の後だった。福島第一原子力発電所の事故により周辺地域が帰還困難区域に指定されたために、県内でも有数の名所であった桜並木が見られなくなったというニュースを聞いた時だ。

桜

住民が去り真っ暗になった町に静かに咲く桜のイメージが、夜の森という言葉に重なって強く印象に残った。風景として暗いだけではなく、住民の方たちの心の暗さも表しているような気がしてやるせない気持ちになったことを覚えている。

2022年1月に立入規制が一部緩和され、やっとお花見ができるようになった。コロナ禍もおさまり、先週末(6、7日)には多くの観光客や地元の方を集めて桜まつりが開催された。

とはいえ、周辺に商店や住宅の姿はなく住民は戻ってきていないようだ。

止む無くこの地を去らなければならなかった人が、戻って来る日を願って描いたと思われる桜並木の壁画が、静かに主を待っていた。