2024年5月23日(木)

松本市美術館

長野県松本市中央4-2-22

幻の華

初めて草間彌生に出会ったのは、2004年に森美術館で開かれたクサマトリックス(KUSAMATRIX)だった。壁も天井もそこに置かれたオブジェも赤白のドットで埋め尽くされた空間に衝撃を受けたことを覚えている。

全景

今まで見るものだと思っていた美術作品を、体験するという形で鑑賞したのも初めてだった。

上京した義父母を東京見物に連れ出して前年(2003)に建ったばかりの六本木ヒルズを案内したのだが、彼らには刺激が強すぎたようだった。

あれから20年の間に彼女がこんなに有名になるとは思いもしなかった。

その水玉が美術館のファサードを覆っている。草間彌生は松本出身(1929年生まれ)なのだそうだ。館内でも彼女の作品を常設展示で見ることができる。

子どもの頃、おばあちゃん(祖母)は生まれた時からおばあちゃんなのだと思っていた。同じように現在95歳の草間彌生も、昔からあの赤い髪でぎょろっとした目でこちらを睨みつける姿形だったような気がする。

ある日突然おばあちゃんに少女時代があったことに気づいた時のように、彼女が松本で小さな女の子として過ごした月日があったことに初めて思い至ったことで胸の内に去来した不思議な感覚。これも彼女の芸術作品なのだろうか、とふと思った。

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