2011年8月30日(火)

府中トロポサイト

東京都府中市浅間町1-13

トロポサイト

府中の森公園の北側に、鬱蒼と茂る木々と夏草に埋もれた広大な空き地が眠っている。敷地の南東隅、生涯学習センター脇にあるゲートには"WARNING"と書かれた看板が掲げられ、まだここ(の一部)が在日米軍の管理下にあることを示している。

廃墟

南側にある航空自衛隊府中基地と府中の森公園を含む一帯は、昭和15年(1940)に建設された旧陸軍燃料廠だったが、戦後は米軍に接収されていた。大部分が返還された今も、左写真中央に聳えるマイクロウェーブ電波塔とその管理棟だけが在日米空軍の通信施設として残されており、既返還部分の跡地利用開発の障害となっている。

電波塔の下に見える二基のパラボラは、対流圏散乱波通信(Tropospheric Scatter/トロポスキャッター)システムというマイクロウェーブ以前の在日米軍通信網に使用されていたもので、現在は使用されていない。草木に侵略された廃墟に立つパラボラの偉容は、「廃墟系」のマニアには魅力的な存在であるらしい。そうでないわたしにも、周囲の景色との違和感が妙に気にかかる。

ハリウッド映画には、一般には知らされていない(時には歴代大統領さえも知らない)軍事施設が某所に存在し、その秘密をめぐってサスペンスが盛り上がる話が時々出てくるけれど、森の奥に潜むこのパラボラには、そんな秘密の物語はないのだろうか。