伏見庭園
東京都昭島市拝島町5-11-15(啓明学園)
多摩川サイクリングロード(左岸)の拝島橋と睦橋に挟まれた区間の中ほど、昭和用水堰のあたりから土手の外側(東)を見ると、こんもりとした森が広がっている。その中にひっそりと、大正11年(1922)に伏見宮貞愛親王が建てた別邸の跡が眠っている。
すでにほとんどの建物は失われ、啓明学園の倉庫に使用されている小さな撞球室(ビリヤード場)だけがポツンと残されている。広い庭には枯山水が築かれているが、クマザサに覆われて、風流と言うよりは野趣に富んだ感じ。雑木林の中で、武蔵野の自然を再現している風情だ。
木の間から反対に多摩川の方を覗いてみた。眩しい光の中を、自転車やランニングの人が軽やかに駆け抜けていく。なるほど、こんな風に見られていたのか、と思うとちょっとこそばゆい。
残念ながら富士山は見えないけれど、烏帽子をかぶったような大岳山が真っ正面に堂々とした姿を見せている。近景に枯山水で表した武蔵野、遠景に奥多摩の大自然を借景にして、全体で東京の自然をすべて取り込んでいる。派手ではないけれど、実はとても贅沢で趣のある庭園だ。