立石様
東京都葛飾区立石8-37-17(立石児童遊園)
「氷山の一角」といわれるように、海上に顕れた氷山の下には何倍もの大きさの本体が隠れている。「立石様」も同じように、想像もつかないくらいの本体を地下に隠した巨石であるらしい。
その名の通り昔は地表に立った石柱であったというのだが、お守りとして削られたり、風化や地盤沈下の影響で今は見る影もない。玉垣を巡らせて保護していなければ、明日にも見えなくなってしまいそうだ。
地名になるほどの遺跡だからさぞかし大きな神社か何かになっているのかと思いきや、訪ねてみると、立石祠は児童公園になっていた。神社の境内が公園になっている例はたくさんあるが、公園の中に祠があるのは珍しい。お地蔵さんならまだしも鳥居がある祠を見るのは初めてだ。
江戸時代後期の「江戸名所図会」には腰掛けほどの岩の塊として描かれているから、その名の通りに立っていたことがあるならさらに時代を遡った遙か昔のことだろう。長い時を経るうちに、まわりの景色の変わりように驚いた立石様は地中にお隠れになって、ちょこんと出した先っぽからこわごわと外の様子をご覧になっているかのように見える。