葛飾区セルロイド工業発祥記念碑
東京都葛飾区東立石3-3-1(渋江公園)
デジタル化の波が押し寄せて、アニメの世界ではセル画がほとんど使われなくなった。「セル」の語源は、当初その素材として使用されていたセルロイドだが、燃えやすくて危険なため、その後トリアセチルセルロース(TAC) に取って代わられた。
映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso、1989)で火災の原因になった映写フィルムもセルロイド製だった。
セルロイドは、一時期、日本のおもちゃ産業を支える重要な素材でもあった。その中心となった葛飾区の渋江公園に、区内におけるセルロイド工業発祥の記念碑が建っている。碑の背面に落書きのように描かれているのは、赤ちゃんの枕元でガランゴロンと鳴っていたローリーポーリー(起き上がりこぼし)だ。そう言えば、あの頃頭の上で回っていたオルゴールメリーも、チャラチャラした花びらがついたセルロイド製だった。
セル画や映画フィルムと同じように、セルロイド製のおもちゃも火災の危険を避けて1950年代からプラスチック製に切り替わっていく。このすぐ近くにあるおもちゃ会社トミー(現・タカラトミー)が1959年に販売を開始し、今も子供たちに人気のおもちゃは、その名も「プラ」レールだ。
記念碑の階段に座る子供たちが何とも浮かない顔をしているのは、そんなセルロイドの現状を憂えているのかもしれない。
葛飾区教育委員会の説明板 | 碑 文 || バラ園