旧猿楽町駐在所
東京都千代田区猿楽町2-3-5(神田猿楽町々会詰所)
マンションの壁に小さな建物がぺたんと張り付いている。入口の上には「千代田区神田猿楽町々會詰所」と書かれ、ガラス窓の内側には纏の絵柄の布がかけられている。人気はないけれど、完全な空き家ではないようだ。
よく見ると一階の向かって左側の角が丸くラウンドしていて、それに沿ってカーブした縦長の窓が開いているところがレトロな雰囲気を出している。昭和5年(1930)頃の建築らしい。
ところで、ここは表通り(白山通)から中に入った一方通行の裏通り(錦華通)。なぜこんなところに交番が…と思って古い地図を見ると、江戸時代には今の白山通、靖国通のところに大通りはなく、こっちの方がメインルートになっていた。
この交番が建った頃にはもう、今の靖国通りの方に賑わいは移っていただろうけれど、まだ多少は余韻が残っていたのかもしれない。そんな昔の思い出を胸に、静かに余生を送っている。そんな風情の建物だ。