刈寄の滝
東京都あきる野市戸倉(刈寄川)
五日市市街から山へと入っていく境目付近、小中野の信号から左へ檜原街道の旧道に入り、橋を渡るごとに左折して刈寄川沿いの山道にはいる。「ホタル通」という洒落た名前が付いているけれど、まぁ普通の山道だ。荒れた路面に気をつけてゆっくりと登っていく。
今までの道程が嘘のようにひんやりとした山の空気が気持ちいい。沢の音、山鳥の声に心が安らぐ。こんな道をセカセカ走ってはもったいない。
と思う間もなく、小さな切り通しに到着した。谷側を覗くと両岸が迫ってS字になった流れがその先でストンと落ちている。その手前にある小さな滝は滝壺で流れが渦を巻いていて今にも龍が飛び出してきそうだ。
切り通し手前のカーブミラーの脇から、踏み跡をたどって降りると二段になった滝の上段の前に出た。滝の前に枝が差し掛かった様子が掛け軸の絵のようだ。滝壺から涼しい風が舞い上がってくる。マイナスイオンが何物かはわからないけれど、滝のまわりの空気には、ただ冷たいだけじゃない、温度とか湿度とかいう数字だけでは説明できない何か不思議な要素が含まれている。滝の前に座ってぼんやりしていると、なんだか幸せな気持ちにつつまれていく感じがする。
踏み跡はさらに下へと延びているが、昨日までの雨に濡れた急斜面は足場が悪く、頼りにできそうな木の根や石もない。心残りではあるけれど、下段はあきらめて帰路についた。