2012年8月19日(日)

聖滝

東京都西多摩郡奥多摩町氷川(川乗谷)

聖滝

高い岩壁に挟まれた廊下の底で妖しく光を放つ碧の水面。伝説の地底湖を発見したような不思議な気持ちに包まれる。その奥に落ちる滝の音は遠く、さっきまでの興奮が嘘のように心が穏やかに鎮まっていく。

廊下の底

この直前まで、歩いてきた河原は広く明るくてこんな景色が待っているとは想像もしていなかった。滝の落ちる音も聞こえずまだ遠いかと思っていた時に、その先で流れが直角に曲がり、その奥から青白い光が漏れてくるのが見えたのだ。閉じられた天の岩戸から漏れてくる光ってこんなだろうか。そう思わせるような神秘的な雰囲気に、思わず「蒼いぞ、蒼いぞ!」と叫びながら近づいて見たのがこの景色だった。

まさに「聖」の字を宛てるにふさわしい。

この奥には聖穴と呼ばれる鍾乳洞があるらしい。この上の林道には、1986年にその洞穴で潜水中に遭難した大学生の慰霊碑が建っていたそうだが、今日訪ねてみると慰霊碑はなく、切り通しの岩壁にそれらしい跡だけが残っていた。昨年(2011)その学生とみられる遺体が発見されたというニュースが伝えられている。

その慰霊碑跡下流側の「水利」という看板を目印に谷へ降りる道を下っていく。その先にある林業の作業場らしい場所を避けて上流へ進み、渓流に下りてから数分で滝に着く。足回りは水の中にはいることを覚悟して準備しておいた方が良い。