宝蔵院
東京都葛飾区奥戸8-5-19
子供の頃、ヒガンバナが怖かった。夕方、頼まれてお使いに行く道ばたに咲いていた数本の花。薄暗い道の端から、人さらいのようにこちらをじっと見て妖しい光を放っていた。
ヒガンバナの傍らには無表情なお地蔵さんが佇んでいた。怖かったのはお地蔵さんの方だったのかもしれないが、冴え冴えと咲く真っ赤な花の陰に隠れて記憶から消えかけている。
ヒガンバナの名所として知られる宝蔵院だが、今年は開花が遅かったとはいえ、お彼岸から2週間以上が経っては、もう大半の花が終わりかけていた。ポツリポツリと残る数株の後ろで、石仏が静かに目を閉じている。立て膝をついた如意輪観音や二人揃った道祖神、馬頭観音や青面金剛(庚申塔)など彫られている仏様も様々だ。
あの頃はどれもお地蔵さんだと思っていたけれど、こうしてみるとけっこういろいろな種類があるものだ。そう、あの石仏、地蔵菩薩だったら怖くはなかったかもしれない。さて、あれはなんだったのだろう。