富士講の碑
東京都世田谷区北沢1-45 タイムズ北沢池ノ上
駐車場の入口に大きな富士講の碑が建っている。表には「補少講義四代目先達鈴木金太郎」「冨平(○に平の字)登山五十度」、裏には大正九年七月の銘と、寄進者の名簿が彫られている。
この碑を門柱に見立てれば、もう一方の石柱には「皇太子殿下○○記念」「昭和十年五月廿七日北澤四丁目町會」とあるが、なんの記念かわからない。○○の部分が、故意に削ったかのように失われている。
駐車場になる前に、おそらくここには浅間神社か何かがあったのではないだろうか。守る人がいなくなって更地にされ、石碑だけが残った、そんな感じだ。
道を挟んだ向かい側には延命地蔵尊と庚申塔が立っている。神社(推定)はなくなっても、信仰の心は残っている。しかし、皇太子の記念碑には何があったのだろう。古い土地の、簡単には消し去ることのできない信仰の記憶と、消されてしまった何かの記憶。なんでもないように見える石造物にもドラマが隠されているようだ。