しばられ地蔵尊
東京都品川区南品川2-1-12 願行寺
頭の大きさに比して体が大きく背が高い。スマートと言うよりは、ごついイメージが北斗の拳の登場人物みたいだ。武蔵坊弁慶のような猛者が身につけていそうな玉の大きな念珠を首に巻き、無表情な顔がいかにも強そうに見える。
強そうだが、実際は縄でグルグル巻にされた囚われの身だ。俺はいいから、お前たち、このスキに逃げろ、みたいな。お地蔵さんはいつも身代わりになって弱い者を助けてくれる。
ところでこのお地蔵様、「しばられ地蔵尊」と呼ばれているけれど実態は「首替え地蔵」だ。願を掛ける人は首を家に持ち帰り、願いが叶ったら二つにして返すのだという。首無しのまま放置するのは失礼だから、願を掛けている間は別の首に替えておくのだろう。お参りした時に前とお顔が違ったら、誰かが願を掛けているということだ。
願が叶ったら倍にして返すというお参りの仕方は珍しくないが、石仏の頭を返すのはそれほど簡単ではないだろう。自分で彫るのも人に頼むのも容易ではない。説明には首を「そっと」持ち帰ると書いてあった。人に隠れて、表現は悪いが、盗人のように首をすげ替える人の姿が目に浮かぶ。そして、苦労してお返しする首を調達するのだろう。
願を掛ける人は、よほど強い思いがあってここに来るに違いない。それに対する見返りも大きなものがあるのだろう。きっと。