赤い前掛け
東京都台東区上野桜木1-14-11 寛永寺・慈海僧正墓
赤い前掛けをかけたお地蔵さん、いや違う、これは慈海僧正の墓石。彫られているのは観音様だ。以前、赤坂の日枝神社でも赤い前掛けの狛犬を見たことがあるけれど、本来、前掛けはお地蔵さんのものじゃないのかな。
お地蔵さんは子供を守る仏さまだから子供の格好をして前掛け(よだれかけ)をしているのだとか。あるいは、子供を守って欲しい母親が自分の子供をお地蔵さんに識別してもらうために、子供の匂いの付いたよだれかけをお地蔵さんにかけるという話も聞いたことがある。赤は魔除けの色なんだそうだ。
大伽藍に収まる仏像とは別に、路傍に佇む石仏は日々の暮らしの平安を祈る庶民のささやかな信仰の対象になってきた。「お地蔵さん」という言葉を、そういう信仰の対象となる石仏一般を指す名称として使用している人もいるのではないだろうか。
初めて江戸六地蔵の大仏のように大きな姿を見た時、これは「地蔵菩薩」ではあっても「お地蔵さん」ではないな、と思ったことを思い出す。この感覚はわたし一人のものではなさそうだ。
この観音様を見て改めてそう思った。