十二地蔵
東京都豊島区駒込7-3-2
染井霊園の入口に立つ舟形の石碑には12体の地蔵が彫られている。6体の地蔵像、いわゆる六地蔵を墓地の入口に祀る例はよく見るが、十二地蔵というのは初めて見た。
石碑に銘は見あたらず、説明板の類も添えられていないが、桜祭りのパンフレットによると、これは享保十五年(1730)の大火の犠牲者を供養するために建てられたものだという。お地蔵さんの頭上にあるもやもやとしたものは、火事の炎か煙を表していると推測されている。
火事がどのくらいの規模だったのかはわからないが、おそらく多くの被害が出たのだろう。六地蔵では手が足らず、数を倍にしてねんごろに供養したということだろうか。
木と紙の家に住み、炊事、照明、暖房と日常生活に火気が欠かせなかった昔は火事が多かった。江戸の町には人口が集中し、住宅も密集していたので火事は類焼しやすく、大規模な火災、いわゆる「大火」になりやすかったという。12体の地蔵と空に渦巻く炎と煙は、あたり一面を覆い尽くす火と煙の下で逃げまどう人々の姿を、投影したものなのかもしれない。