野川の柳
東京都小金井市東町1-6(野川公園)
30年ほど前の社会人になりたての頃、北九州に長期出張した時に見た柳の並木が今でも忘れられない。それまで柳並木というものを意識して見たことが無かったのだが、たまたま新緑の季節で、風に揺れる枝の先で朝日を浴びた若葉がキラキラと輝く景色は言い様の無いほどに素晴らしいものだった。
「客舎 青青 柳色新たなり」
中国唐代の詩人・王維が詠った詩(元二の安西に使いするを送る)の一節が思い浮かんできた。この詩は「西のかた 陽関を出づれば故人無からん」と続く。まさにそんな境遇にあったので、いっそう柳の青さが目に染みたのかもしれない。
そんな個人的な感情を差し引いても、柳の新緑は良いものだ。野川公園の柳は今が盛り。枝一杯の新芽が輝いている。
桜は終わっても春はまだまだ。わき水広場のズミの木や自然観察園のサクラソウ、土手に咲くタンポポも、枝を揺らす柳の指揮に合わせて春だ春だと歌っているようだ。