ミズキ
東京都杉並区和泉4-40
神田川の帰り道、どこからともなく甘い香りが流れてきた。足を止めて辺りを見回してみると、対岸の斜面を艶やかなツツジの花が埋めている。そのかたわらに、満開の花をつけたミズキの木が聳えていた。
白い小さな花を集めて帽子のようになったその下に数枚の葉を垂らした姿は、花の冠を被って腰簑を着けた南洋の舞姫か、はたまた宇宙から飛来した異星人か。ほとんど同じ高さに一列に集まり、段々になって咲いている様子が面白い。
近づいてみると、根方の土は洗われて根がむき出しになっていた。長年の雨風で斜面の土砂が流れてしまったのか、あるいは、この木自身も土砂と一緒に崩れ落ちてきたところを、踏み留まってここにしがみついているのかもしれない。
がっちりと地面を掴んだ根は、もしゃもしゃとタコの足のように伸びて、今にも歩き出しそうにも見える。次に通りかかった時にも同じところにいるかどうか、ちょっと心配。
(2017/10/31) 久しぶりに通りかかると、二つに分かれた幹の片方は伐られ、枝も大部分が払われて寂しくなっていました