2013年5月21日(火)

残したい『日本の音風景100選』の碑

千葉県松戸市矢切地先 川の一里塚

記念碑

大風が吹くと、木はざわめき、電線はうなり、家はバタバタする。森羅万象すべてのものが不安な音を立てて揺れている中で、どこからともなく「ぶぉーん、ぶぉーん」というウシガエルの鳴き声のような低いうなり声が聞こえてきて、さらに不安がつのることがよくあった。

川の一里塚

昔々、まだ町中に銭湯や工場の煙突が何本も建っていた頃の話だ。空になったビール瓶の口を吹いて、その音を再現する遊びをよくやった憶えもある。煙突もビール瓶も、身の回りから姿を消して久しい。

矢切の渡し近くの土手の上に建つ『日本の音風景100選』の記念碑には大小さまざまの穴が空いている。その穴に耳をつけると、巻き貝を耳に当てて聞くような不思議な音が聞こえてくる。巻き貝の音は潮騒のざわめきに例えられるけれど、こちらの音は、例えるなら映画「2001年宇宙の旅」で宇宙船の外に放り出された宇宙飛行士が聞いたかもしれない、神秘の中に絶望を含んだ宇宙空間の音。風の日に聞いた煙突のうなり声にも、少し似ている。

耳を離すと、高い空の上で鳴き交わすヒバリのさえずりが聞こえた。ぽかぽか、と陽の射す音も聞こえそうなのどかな青空。遠くから部活かなにか、スポーツをする声も聞こえる。あぁ、これが選ばれた音風景なんだね。よかった。

残したい『日本の音風景100選』の説明 | 川の一里塚の説明板