南部鼻曲がり鮭
岩手県宮古市
子供の頃に親しんだ童謡に「しおじゃけのうた」(作詞:神沢利子、作曲:大中恩)というのがあった。
♪ しおじゃけ しおじゃけ はなまがり〜 どうして そんなに まがったの
塩鮭は押し合いへし合いして川を遡上するうちに、石にぶつけて鼻が曲がってしまい、それが悲しくて泣いた涙でしょっぱくなったという歌だ。塩鮭は調理法であってシャケの種類じゃないぞ、という突っ込みはさておき、短いけれど印象に残る歌だった。
宮古市のマンホールにはその塩鮭、もとい、鼻曲がりの鮭がデザインされている。鼻が曲がるのは雄の鮭で、産卵のために川を遡上する際に見られる変化だ。宮古湾に注ぐ津軽石川は鮭が多く遡上する川として知られており、昔から「南部鼻曲がり鮭」と呼ばれて親しまれてきた。
鮭は生まれた川に帰ってくる魚だ。
この震災で望むと望まざるとに関わらず、いろんな意味で故郷から離れてしまった人々のことを思って、仲間と戯れる鼻曲がりの姿に胸が熱くなってしまった。