2013年6月10日(月)

平井賀川水門

岩手県下閉伊郡田野畑村和野 平井賀川河口

水門

震災前の旅番組でその姿を見たことがあったように思うのだが思い出せない。NHKの「クイズでGo! ローカル線の旅」だったような気もするし、そうじゃないかもしれない。その時は、まさか自分が訪ねる日が来るとは思ってもみなかった。

駅前から

田野畑駅で連絡バスから三陸鉄道に乗り換える空き時間に海を見に行く途中、水門の上に載る三鉄の車両を見て、昔見たTV番組の一場面が蘇ってきた。三鉄の車窓から三鉄が見える。その後ろに広がる海は青く、穏やかで、誰もがにこやかにその車窓風景を楽しんでいた。

本当に車両が乗っているわけではなく、水門の機械室の外観を車両に見立てて塗装したものだ。津波に襲われて窓ガラスは破れ、出入口のドアもひしゃげているけれど、思ったほどには被害は大きくないように見えた。しかし駅まで戻り、振り返ってその姿を見た時、わたしは自分の認識の甘さを痛感させられることになる。

すべてがなぎ払われた中に、水門だけが立っている。その景色を見て、あの高さまで津波が来たのか、とその事実に戦慄する。そして、あの青く美しい海が豹変するのだという、そのギャップに倍増させられた恐怖がわたしを襲ってきた。

もしもう一度訪れることがあるならば、その時は穏やかな心持ちでこの景色を眺めたい。それがわたしの願いだ。