龍眼寺
東京都江東区亀戸3-34-2
庚申塔がススキに埋もれている。秋の野辺を散策していて、ふと道端で見つけたような景色。高さ1mほどの塔の頭だけをちょこんと出した風情が、秋の侘びしさを感じさせる。
江戸時代には萩寺として名を馳せおおいに賑わったという龍眼寺(りゅうげんじ)だが、印象的だったのはススキの方だった。もちろん萩もたくさん咲いてはいるのだけれど、たとえば駐車場の壁際にまとまっていたりとか、イマイチ心に響かない咲き具合なのだ。
ススキもハギも秋風が似合う。芒原を駆け抜ける風に波打つ銀色の穂。そよそよと吹く風を受けて、長く伸びた枝を揺らす萩。その枝のうねりが去りゆく夏に手を振ってお別れを告げているように見える。
今やお寺の周りにはビルが建ち並び、萩に似合う秋風は感じにくくなっている。そうして「萩寺」の名も色褪せていくのだろうか。