無名戦士慰霊記念碑
東京都世田谷区豪徳寺2-24-7 豪徳寺
先の大戦で、東南アジアや南洋諸島、いわゆる「南方」で多くの命が失われた。斃れた兵士たちを熱帯のたくましい生命力がまたたく間に覆い、精霊となった彼らは、深いジャングルの中でたくさんの命たちと共に新しい生を生きているのかもしれない。
ふとそんなことを思ったのは、豪徳寺に立つ慰霊碑に宿る小さな命を発見したからだ。
横たわる若者の体から一本の木が生えている。遠目には朝日を浴びてキラキラと輝く葉だけが、まさに若者の体から飛び立っていくかのように見える。それは肉体から解き放たれて自由になった彼の命なのか、あるいは形を変えて蘇った姿か。
もちろん、これは慰霊碑の作者が意図したことではないだろう。神がちょっとしたいたずら心で若者の体をひと撫でしたのだ。兵士の命は、ただ失われたのではなく、いつまでも永遠に続いているのだとわれわれに教えるために。