狐塚之霊碑
東京都世田谷区代田3-18-15 代田広場
住宅街の一角、児童公園の真ん中に、場違いな雰囲気の石碑が建っている。碑の上部、肝心の文字が損傷しているけれど、「狐塚之霊碑」と書かれているようだ。最後の字は(石偏に界)に見えるが、あるいは「霊界」なのか?
いずれにしても児童公園には似つかわしくないおどろおどろしい雰囲気が漂っている。
碑文によれば明治5年(1872)に狐の祟りと思われるような事件が多発したため、馬込村の御嶽神社から人を呼んで御祓いをしてもらった記念碑であるらしい。
碑が建てられたのは明治32年(1899)。この間の30年近い年月にどういう意味があるのかわからないけれど、20世紀を迎える直前のこの年に、再び悪狐が跋扈して、それを封じ込めようとしたのだろうか。
科学の進歩で人々の周りから闇が姿を消し、多くの伝承が「迷信」として駆逐されていったけれど、この碑を撤去するのはまだ憚られるようだ。今もこの町のどこかで、狐たちはひっそりと息を潜めて逆襲の機会を窺っているのかもしれない。