小名木川旧護岸
東京都江東区北砂5-20-18付近
小名木川に沿って「塩の道」と名づけられた遊歩道が整備されている。ジョギングや散歩の人影をちらほらと見かけるが、残念なことに自転車は通行禁止。一般道路からの入口は階段になっており、厳しい禁止看板が立っている。
それでやむなく外側の一般道路を走るわけだが、川沿いには高い護岸があって景色は良くない。中でも一段と護岸が高くなったところに「小名木川旧護岸」と書かれていた。
内側には解説板が設置され、旧護岸の一部をここに残した由来が書かれている。その下端右に青い文字で「東京湾平均干潮位」、上端右には「東京湾平均満潮位」とある。つまり現在の小名木川は東京湾より低いところを流れている。そして、その後ろの道路も団地もこの二つの目盛りの間、つまり東京湾の平均海面と同じぐらいの高さのところにあることになる。なるほど、これが「海抜ゼロメートル地帯」か。
長年の治水事業の成果で水害が減り、町を守るために高く聳えていた旧護岸はお役ご免と相成った。新しい護岸は旧護岸より低く、「江戸情緒を醸し出す石積み風」になっている。
まわりから頭ひとつ抜け出した無骨な旧護岸は、「若者は『江戸情緒』などと浮かれておるが、まだまだ水害の危機が100%無くなったわけではないぞ」と、渋い顔をして睨みをきかせている地域の長老のように見えた。