船玉碑
岩手県陸前高田市広田町字黒崎10番地 黒崎神社
東日本大震災の津波で流されたいろいろなものが、太平洋を渡ってカナダやアメリカの西海岸に漂着しているという。そんなに遠くまで流されてしまうものなのかと驚くと共に、海の底に沈んでしまわずに、我々の元に戻ってきてくれたことをうれしく思う。
スタートから27km、ふたつ目のAid Station黒崎温泉にある黒崎神社にふたつの石碑が建っている。「安政二卯年九月」(1855)の建立年と「船玉碑」(ふなだまひ)「金毘羅大権現」と彫られた文字が赤く塗られてよく目立つ。天保十年(1839)に嵐で流された漁師たちが、小笠原に漂着し、無事帰ってきたことに感謝して建てられたものだ。
昔の人は、海の果てには滝があって世界はそこで終わっていると考えていたと言われているけれど、そんなことはなくて、海の向こうにも人が住む島や大陸があって流されてきた人や物を温かく迎えてくれる。世界はつながっていて、いつかはそこを経由して帰ってこられることもあるんだ。そんなことを改めて気づかせてくれる出会いだった。