戦災高野槙
東京都世田谷区代田2-17-3 円乗院
説明板に書かれたコウヤマキは、絵本に描かれたクリスマスツリーのようにきれいな三角形をしている。それに対して、この樹形のなんと醜怪なことか。戦災の業火に焼かれて、こんなになってしまったのか。その姿は戦争の悲惨さを無言で訴えている。
北沢川緑道の環七側の端に位置する円乗院には、戦災に遭ったコウヤマキが今も残されている。幹は炭のような色をしていて葉の茂る気配はないけれど、戦後70年を長らえて、今も戦争の悲劇を伝えるために境内にその姿をさらしている。人間は年老いて生き証人が少なくなっていくなか、枯れ木のように見えながらも立ち続けるその姿に圧倒される。
門前にはお地蔵様がいくつも並んでいた。直接戦災を供養するものではないけれど、それも含めて、遠い昔から地域の人々の平安を見守り続けてきたのだろう。優しいお顔に救われる思いがする。
東京都内の戦争遺跡はもうほとんど行き尽くしたかと思っていたのだが、灯台もと暗し、自転車通勤路のすぐ脇にもあったとは今の今まで気がつかなかった。