秋葉山大権現常夜燈
東京都渋谷区広尾5-1-26付近
恵比須から東へ走る明治通りが、外苑西通りと交差する天現寺交差点の手前で南へ緩くカーブするところをそのまま直進する。「広尾散歩通り」と名付けられた細い道の中ほどに小さな祠が建っていた。
その前に立っている石柱には「奉納秋葉山大權現常夜燈」と書かれているけれど、まさかこの柱が常夜燈ではあるまい。道を照らす役目のものが祠の中に入っているとも思えないし、実際ガラス戸の中を覗いてもそれらしいものは見あたらない。
狐につままれたような思いで上を見ると、見慣れた龍に替わって風をきって走る烏天狗の彫り物が見えた。秋葉山だから天狗なのは当然だが、ほかではあまり見ない図柄なので得した気になる。石柱には大正九年の日付が彫られていた。
車に追い立てられるように走ってきた緊張がふっと抜けたところでこの祠のまわりの景色を見ると、時間も場所も今までとは違ったどこか遠いところに来てしまったような不思議な感じになる。そういうのを「天狗にさらわれた」というのだろうか。