明見院の椿
埼玉県川越市大字今福677
華々しい桜の影で忘れられがちだけれど、ツバキの花も今が盛りだ。漢字も木偏に春と書く。今日もあちこちの垣根や庭先に咲く色とりどりの花を見ながら走ってきた。
前から何となく気になっていたのだけれど、ディズニー映画「ふしぎの国のアリス」(1951)でハートの女王の庭に咲いていたバラがわたしには椿に見える。
「薔薇」と書けば、棘の付いた鞭のような蔓をしなやかにめぐらせ、不用意に触れば壊れそうなガラスのように繊細な花を咲かせるイメージが湧いてくる。
ところが、ハートの女王のバラは着ぐるみ人形のようにもっこりとした緑の茂みに、トランプの兵隊にペンキを塗られてもびくともしないのっぺりとした花を咲かせている。女王の理不尽な要求のために塗り替え中の木は花の色が赤白まだらだ。その感じが、わたしには椿に似て見えてしまうのだ。
明見院の境内にも椿が咲いていた。三角錐に整えられた木に赤白の花がちりばめられた姿はクリスマスツリーのようだ。
木の下を見ると、花びらを散らすことなく丸のままぽとんと落ちた花がいくつか…。
「首を刎ねよ〜」と絶叫する女王の怖い顔が浮かんで、思わず耳を塞いでしまった。