山王清兵衛
東京都荒川区南千住7-23-10
迷い込んだ住宅地の片隅にひっそりと建つ小祠の説明板を見て、目が点になった。
「いずれかの藩士清兵衛が虫歯の痛みに耐えかねてこの地で切腹し、…」
えっ、虫歯で切腹?
虫歯になったら、虫歯部分を削るか、歯の神経を抜くか、歯そのものを抜くか。痛みを抑えることはできても、根本的に治すことは現代の医療技術を持ってしてもできない。歯医者がいなかった江戸時代に、あの痛みに耐えるのは辛かったことだろう。
でも、何も切腹までしなくたって良さそうなものだ。
切腹した清兵衛を祀る祠は、説明板の立っていた日枝神社から南へ100mほど戻った交差点の角に、木の陰に隠れるようにひっそりと建っていた。半開きになった扉の中に石仏や石碑の類は見あたらず、説明板にあるようなお礼参りの絵馬を奉納した形跡もない。中には賽銭箱のようなものが無造作に投げ込まれゴミ捨て場のようになっていた。
歯科医院がどこにでもある現代に、もはや清兵衛さんが歯神として活躍する場は無くなってしまったようだ。
(荒川区教育委員会の説明板) : 山王清兵衛(日枝神社) | 砂尾堤と砂尾長者