大菩薩ライン
山梨県甲州市塩山上萩原(青梅街道)
山肌にしがみついた細い道が、うねうねと地道に高度を稼いでいく。そんな旧来の林道のイメージを吹き飛ばして、高架橋で谷を渡り、高速道路のように明るく広々とした道が空を翔るように登っていく。
柳沢峠に通じる大菩薩ライン(青梅街道)は、「天空回廊」とでも名付けたくなるようなダイナミックな姿で走っていく我々を魅了する。カタツムリのようにのろのろと登っていくときにはそうでもないが、ダウンヒルで駆け下りてくるときには本当に空を飛んでいるような気分になることだろう。
まだフジの花の咲く山には、カエルのようなハルゼミの合唱がこだましている。初めて三陸の龍泉洞で聞いた鳴き声より少しソフトな感じがするのは種類が違うのか、耳が慣れたのか。景色もBGM(?)も異次元世界に紛れ込んだかのような不思議な道で、重い足と切れる息だけがリアルだった。