津波浸水区間
宮城県気仙沼市本吉町菅の沢
気仙沼から石巻へ、リアス海岸に沿って道は細かい上り下りをくり返して南下していく。最高でも80m、平均40m前後の標高差なのでしんどいことはないけれど、海沿いなのに山道を走っているような不思議な気持ちになる。
その上り下りの坂の途中に必ず現れるのが、「ここから」「ここまで」と書かれた過去の津波浸水区間表示だ。「過去の」と書かれているけれど、それがついこの間の大震災であることは言わずもがなだろう。
柱に書かれている標高は概ね20m〜30mの間を指している。東京で言うと、愛宕山(標高26.7m)が水没するぐらいの津波が来たと言うことに驚く。
ここから、ここまで、ここから、ここまで、そしてまた、ここから。その繰り返しに、一体どれほどの土地が津波に沈んだのかと呆然とする。本来ならば心躍る下り坂の先には、今もむき出しになったままの赤茶けた地面に工事中のサインや重機が見える。その光景に胸が塞がる。
あれから4年半にもなるのに復興は遅々として進まないように見えるけれど、いつかはきれいな景色が戻る日が来るだろう。その時が来ても、登りで踏ん張ったわたしの足と下りで風を感じたわたしの頬は、この景色を忘れさせてはくれない。そんな気がする。