2003年8月23日(土)

三億円事件現場

東京都府中市栄町3-6付近(府中刑務所北側学園通)

府中刑務所

盗みというのは、そもそも夜陰に紛れてこそこそとやるものだったのに、最近は人を殺めたり、建物などを派手に壊したりして臆面もなく事件を起こす輩が増えたのは困ったものだ。

昭和43年(1968)12月10日9時21分頃、東芝府中工場で支給されるボーナスを積んだ日本信託銀行の現金輸送車が、府中刑務所北側の路上で白バイ警官姿の男に襲われ(というか乗り逃げされ、と言うか)3億円(\294,307,500.-)が盗まれた事件は、30年以上経つ今でも鮮明に記憶に残っている。

東芝

数々の犯罪の中でも、白昼堂々、しかも殺傷も破壊もなく鮮やかに巨額の現金が盗まれた「三億円事件」は、犯罪史上、後にも先にも例のない希有な事例と言えるだろう。

当時はインスタントラーメンが30円ぐらいだったと思う。大卒の初任給は3万円弱と言うことで、3億円は一生かかっても使い切れない額として人々の関心を集め、「3億円分の札束」と言う見せ物がスーパーなどに置かれて話題になった。当時見た映画で、植木等が演じる3億円犯人が金の使い道に困って巨額の掛け金を競馬につぎ込んだところが、大当たりして笑いが止まらず大量の札束をあたりへばらまくというシーンを覚えている。

有名な白バイ警官のモンタージュ写真の効果もなく、昭和50年(1975)12月10日、事件は未解決のまま時効となった。

黒々としていた刑務所の塀はペイントされてきれいになり、ケヤキの木などが描かれている。西側に向かい合った東芝にはエレベータ関係の施設と思われる塔が建っているが、「二度と俺たちのボーナスは盗ませないぞ」と目を光らせているようで、おかしい。