旧馬込小学校の時計台
東京都大田区南馬込1-55-8
「えっ!?」と絶句して、一瞬写真を撮るのを躊躇した。小さな公園の片隅にモニュメントとして時計台だけが残されている姿を想像してきたのに、一般の民家、それも和風の住宅に唐突な感じで擬洋風の時計台が載っている。
向かいにある馬込小学校が改築される時に、旧校舎に設置されていた時計台が失われるのを惜しんだ個人が譲り受けて移設したものだそうだ。大正14年(1925)から昭和37年(1962)ごろまで小学校のシンボルとして時を刻んできた。
現役時代はどんな建物だったのだろう。有名な長野の開智学校や中込学校のように、塔屋を中央にして左右に教室を並べ、両翼を広げる堂々とした姿を誇っていたのか、あるいは札幌時計台のように建物の片側に塔が寄った蒸気機関車型だったのか。いろいろと想像してみるけれど、正解を知る手がかりを見付けることはできなかった。
大正生まれのお爺さんは、現役を引退した今も、子どもたちの健やかな成長を祈って毎日その姿を見守っている。そんな景色が微笑ましい。