麻生不動院のダルマ市
神奈川県川崎市麻生区下麻生1-21-10
こんなことを言ったら住んでいる人に怒られるけれど、小田急線と田園都市線に挟まれた川崎市麻生区と横浜市青葉区の一帯は、わたしにとって山深く交通も途絶した秘境の地といったイメージがある。
そんな気分で王禅寺のあたりを走っていたら、「新大谷」と書かれた交差点のところで、突然大勢の人があふれる光景に出くわしてびっくりした。
駅はもちろん大きな団地も工場もなく、一体こんなにたくさんの人たちはどこから湧いてどこへ行くのか。眼で追った先に「だるま市」の文字が見えた。
バス通りから折れて中に入ると、両側に露店が並んだ住宅地の狭い路地のなかを人々がギュウギュウ詰めになって歩いていく。植木、しらす干し、おもちゃ、焼きそば、飴、ブロマイド、鍋釜包丁、農業用品、射的、などなど、世の中にこんなにもたくさんの種類があったかと思うほど多種多様なお店が延々と続いていく。肝心のだるま市よりも、その露店の数と種類に感動してしまった。
麻生不動院は住宅地の奥にある小さなお寺で、普段の様子を想像してみると、とても賑やかな市が立つような場所には思えない。童話などで、深い森や夜の荒野を彷徨っていると突然賑やかな場所に出て夢のような体験をするのだが再びそこを訪れることはできない、というような話があるけれど、まさにそんな異界に紛れ込んだような不思議な出会いだった。