屋敷分の庚申塔
東京都府中市美好町3-42-2 浅間神社
「巨人の星」「あしたのジョー」(高森朝雄名義)とならぶ梶原一騎原作の傑作マンガ「タイガーマスク」(1968〜1971)にミスターノーという悪役レスラーが登場する。覆面で隠した顔と見せかけた部分に卵形の鉄球を入れたのっぺらぼうの不気味なキャラクターだ。
浅間神社の前に建つ庚申塔は、傍らの説明碑によれば府中市内で一番古いものだという。庚申塔は見飽きているが、そういういわれがあるなら写真を撮っておこう、とカメラを向けてハッとした。
庚申塔の前に並んだ三体の仏像に顔がない。というか、頭がないところに取って付けたように小石を載せて間に合わせてある。まさにミスターノーのような姿だ。
ミスターノーは最後に頭(と思われていた部分)をもがれてその正体を観客の前に曝すことになるのだが、この仏像たちは、もがれた頭の跡に石を載せて取り繕ってある。明治時代の廃仏毀釈の跡だろう。
真ん中の一体にはほかと違う、少し癖のある石が載っていた。アゴのしゃくれたおっさんが、斜に構えてそっぽを向いているような顔だ。ともすれば凄惨なイメージになりそうな事件を、茶目っ気のある村人がうまくカバーしたようなセンスを感じる。
バカボンのパパの顔のようにも見えるけど、これでいいのか?(これでいいのだ!)