下清戸のコブシ
東京都清瀬市下清戸5-791付近
「散歩の醍醐味は立ち止まることにある。」と、いつも思っている。
思い浮かべるのは、初老の男性がふと立ち止まり、杖に持たれて民家の垣根越しに漂ってくる花の香にうっとりする風景。見上げればそこには春を告げる梅の花。俳句のひとつもひねりたくなる景色だ。
だから自転車に乗っていても、あちこちで立ち止まってしまう。自転車乗りは走ることが楽しいと思っている人が多いから、去年(※)参加したツールド東北では調子が悪いのかと運営スタッフに声を掛けられたぐらいだ。
川越へしだれ桜を見に行く途中に、大きなコブシの木を見つけて急ブレーキをかけた。赤い鳥居が建っているけれど、その先の祠は小さく名前もあるのか無いのかはっきりしない。農家の方が豊作を願って畑の隅に建てたのだろう。春を迎え、今年の豊作を占うかのような満開の咲きっぷりが見事だ。
この木を目指してわざわざ走っていくことはないけれど、機会があるなら何度でも通りすがって立ち止まりたい。春の命を感じた素敵な出会いだった。
※ 記:2016年7月17日