表参道けやきビル
東京都渋谷区神宮前5-1-3
どこかで見たことがあるような気がする。
いつかのオリンピックの聖火台だったような、どこかの国の先住民が掲げる松明のような。古代人か異星人が築いたこんな感じの砦を何かの映画を見たことがあるような気もするし、あるいは、ブリューゲルの描いたバベルの塔に似ているようでもある。
丸い平面に裾広がりの姿は大木の幹を彷彿とさせ、材木を編んで作った籠のようにも見える。「けやきビル」という名が示す通り、表参道のケヤキ並木にリスペクトの意を表したデザインなのだろう。隣り合うTOD'S表参道の近未来的なイメージに対峙して、原始の昔に立ち戻って力強いケヤキの生命力を表現した。そんな印象を受ける。
どこかで見たことがあるような気がするのは、根底にあるものが、まさに毎日見ているケヤキのイメージそのものだからなのかもしれない。
設計は團紀彦(2013)。
HUGO BOSSの旗艦店として先鋭的なデザインを展開した内装と、プリミティブなイメージの外装の絶妙なバランス感がおもしろい。