2016年8月16日(火)

樺太国境画定標石

東京都新宿区霞ヶ丘町1 (明治神宮外苑)

樺太国境画定標石

近年、尖閣諸島や竹島を巡る日中韓の領土問題がメディアで取りあげられることが増えている。わたしが学生の頃の領土問題と言えばロシア(当時はソビエト連邦)との間で争われていた北方領土問題だったが、最近は北の方のニュースをとんと聞かなくなった。メディアは動きの派手な方に飛びつきたがる。

樺太島日露国境天測標の碑

明治神宮外苑の、絵画館前西側の植え込みに樺太国境画定標石のレプリカが設置されている。第二次世界大戦の敗戦まで、樺太島(サハリン)の北緯50度以南は日本の領土とされ、この標石が国境に置かれていた。その歴史を記憶するためのモニュメントだ。

外務省のHPに掲載された「日本の領土をめぐる情勢」のページでは、尖閣諸島、竹島、北方領土(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)について日本の領土であることを主張しており、樺太については何も述べていない。

北緯50度線と言えば、女優・岡田嘉子と演出家・杉本良吉の亡命・逃避行の舞台としてドラマチックに、あるいはスキャンダラスなイメージで語られることがあるが、今はそんなことを知る人も少なくなっただろう。領土問題の議論からもはずされ、多くの人の記憶からも忘れられて、ひっそりとたたずむ日露国境の標石は、時折訪れるわたしのような不意の来訪者に思い出話を聞かせる機会を静かに待っている。

明治神宮外苑の説明板