建国記念文庫
東京都新宿区霞ヶ丘町8 (明治神宮外苑)
「断捨離」がはやっているらしい。身の回りを整理して、不要なものを捨ててスッキリしようと言われても、わたしには捨てられないものばかりでコトはそうそう簡単ではない。特に、手紙は捨てられないものの最右翼に位置していると言っても過言ではない。二度と読み返さないようなものであっても、だ。。
建国記念文庫は「文庫」とは言っても図書館のようなものではない。そもそもガラスケースのような部分には「建国記念文庫」と墨書された太い柱があるばかりで、一見したところでは、どこが文庫なのかハテナマークで頭の中が一杯になってしまう。
おそらく屋根のように見える部分がそうなのだろう。わたしが昔の手紙を屋根裏にしまっているように、その中に、再び読まれることのない幾万もの書簡・書類の類が保管されている。
国立競技場(跡地)と神宮球場、絵画館に囲まれた文庫の森では、騒然とした夏蝉の声にも関わらず、そこだけ別世界のような不思議に静かな雰囲気が感じられる。読書をする人が一人、ただぼんやりとしているだけの人が一人。誰も建国について考えている様子は見られない。いまや、多くの人にとって建国の日は、数ある休日の一つでしかないのではないかな。
最初に「捨てられない」と書いたけれど、実際の手紙には、捨てられないものと捨てなければならなかったものがある。灰となった青春の思い出は、風が吹くと時々わたしの胸の中で舞い上がって、目にはいると痛い。