2016年8月31日(水)

七ツ釜五段の滝

山梨県山梨市三富上釜口

全景

西沢渓谷左岸を辿ってきた登山道は方杖橋で右岸に渡り、帰り道の旧森林軌道に向かって高度を上げていく。その橋の上から上流側を見ると、右手へ直角に曲がった谷の奥から雪崩が落ちるように豪快な飛瀑が見える。

まさか、それが西沢渓谷散策のクライマックス・七ツ釜五段の滝だとは思わなかった。

釜

観光案内のパンフレットや訪れた人のBLOGなどに紹介される写真は、十中八九、中段の釜を捉えた右写真のアングルだ。秋の紅葉とエメラルドグリーンの釜の絵から、静謐で神秘的なイメージを抱いていたけれど、現実は、少なくとも台風通過後の渓谷は「滝」本来の荒々しさを存分に発揮していた。

釜の半分は飛沫で白濁しているけれど、かえって今の時期にはその方が清々しく、涼しげな感じが好もしい。

ところで、ここまでに見てきた竜神の滝や貞泉の滝などに比べて、「七ツ釜五段の滝」は見たまんまというか、なんの工夫もない命名だ。滝壺を「釜」と言い換えることで、深く美しい滝壺の様子を情緒的に表現する以外に、この美しさを表す良い名前が先人には思い浮かばなかったのだろう。

それでふと思い出したのが、最近の洋画や洋楽のタイトルだ。昔は「明日に向かって撃て!」(※1)や「俺たちに明日はない」(※2)、「明日に架ける橋」(※3)などいい邦訳があったけれど、最近は原語のままが多い。かつての「スパイ大作戦」(※4)も最新作は「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(※5)とそのまんまカタカナだ。

トンチンカンな邦題をつけられるよりはマシとは言え、ちょっと芸がない感じもするよね。

※1 Butch Cassidy and the Sundance Kid(George Roy Hill、1969)
※2 Bonnie and Clyde(Arthur Penn、1967)
※3 Bridge over Troubled Water(Simon & Garfunkel、1970)
※4 Mission: Impossible(TV Series、1966〜1973)
※5 Mission: Impossible - Rogue Nation(Christopher McQuarrie、2015)