出世稲荷の公孫樹
埼玉県川越市松江町1-7-1
川越で大イチョウと言えば出世稲荷、ということらしい。手元の地図(MAPPLE 文庫地図)には神社名が無く、ただ「大イチョウ」とだけ朱書きされている。
鳥居の両側に立つ二本の大イチョウの、片方はもう跡形もなく葉を散らしてしまったが、向かって左側の木はまだたくさんの葉を付けて黄金色に輝いている。なぜ出世稲荷といわれるのか、現地の由緒書きに説明はないが、木の葉がすべて小判だったら出世するのは間違いなさそうだ。
いやいや、世の中カネがすべてではないぞ。名声と分不相応の財産を得たばかりに、墜ちていく人もいるじゃないか。
このイチョウだって、じきにすべての葉を落として真っ裸になってしまう。
それでも六百年を超す長い年月を元気に過ごし、今もこうして雄々しく立つその力強い姿には惹かれるものがある。
誰もいなくなった頃合いを見計らって、その幹に抱きついてみた。もうこの年で出世は望まないけれど、人に迷惑をかけることなく元気に長らえられますように。