西東京変電所
東京都町田市真光寺町160
森の中の山道を抜けて現れた景色に、不思議な既視感を感じた。谷戸の奥に開けた畑地の中に点在する小屋(民家なのか農機具の置き場なのか)を蹂躙するように建ち並ぶ巨大な高圧鉄塔。平成ガメラシリーズ第1作「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)でギャオスとガメラに襲われた山村のイメージが頭の中によみがえってくる。
いや、別の意味でのデジャヴュかもしれない。映画「ビッグフィッシュ」(2003)で主人公が訪れたスペクターの町か故事に伝わる桃源郷。あそこに見えている小屋はヘンゼルとグレーテルが見つけたお菓子の家か女の子がスープを飲んじゃう3びきのくまの留守家、はたまた白雪姫が迷い込んだ小人の家かもしれない。
古今東西、森の中に忽然と現れる異郷や異人との出会いの話は枚挙にいとまがない。人はそこで、様々な人生の転機を迎える。
この景色から連想される、小説「鉄塔 武蔵野線」(銀林みのる)の最後に登場する原子力発電所も、偶然迷い込んだわけではないけれど、ある意味それに類する場所だったのだろう。
実はわたしにも子供の頃、探検に出かけて見つけた場所に、その後行くことができなくなった経験がある。そのころ読んだ本に、ちょっと意味は違うけれど、神隠しにあう理由として、「人間の足の長さは厳密には左右同じではないので、真っ直ぐ歩いているように思っても実は曲がっていて、そのために意図していない方向に進んで迷うことがある」というようなことが書いてあったのを読んで、なるほどと思ったことを思い出した。
放浪癖は今も直らず、迷子体験も何度かあるけれど、わたしの人生に影響はあったのかなぁ。