2017年5月31日(水)

ミュシャ展

東京都港区六本木7-22-2 国立新美術館

スラヴ民族の賛歌

ミュシャではなくムハ。アール・ヌーヴォー時代にパリで活躍したAlfons Maria Muchaの名を、フランス語読みではなく、祖国チェコではムハと発音する。そしてそれは、繊細で美しい女性像を描くグラフィックデザイナーではなく、祖国への愛と誇りを描いた画家の名でもある。

展示室

ムハ晩年の大作「スラヴ叙事詩」を見に、国立新美術館のミュシャ展に行ってきた。一世を風靡した劇場のポスターや物語の挿絵などの、軽やかで華々しいおしゃれなイメージとは正反対の、重々しい絵画作品は敬遠する人が多いのでは?と思った予想を裏切って、会場には大勢の人が詰めかけてごった返していた。

美術展では珍しく、展示室の一部が撮影可能エリアになっていた。ここぞとばかりに撮りまくる人々のシャッター音が途切れることなく会場に響いている。みんな作品を見ずにカメラの液晶画面に見入っているのがおかしい。

先のユーゴ紛争の例をみるまでもなく、スラブ民族の歴史は争いと和解、離合集散を繰り返してきた。ここに描かれた様々な歴史的事件を通して、複雑な歴史に翻弄されてきた人々の誇りや悲しみ、彼らに向けるムハの愛と慈しみに満ちたまなざしが画面からひしひしと伝わってくる。

美しい、楽しい、だけではない、久々に心の奥深くに残る展覧会だった。

「スラヴ民族の賛歌」の解説