2017年8月22日(火)

女川町民野球場 仮設住宅

宮城県牡鹿郡女川町女川浜大原190

スコアボード

任務を解かれたスコアボードはのっぺらぼうのまま、疲れた表情をして立ちすくんでいる。かつて、ここに名を連ねた選手たちは、今も健在だろうか。

今、球場を占拠しているのは被災者の住む仮設住宅だ。坂茂の提案により、海上輸送用のコンテナを使った3階建の仮設住宅が建てられている。

ダグアウト

仮設住宅とは、その名の通り急場しのぎのやっつけ仕事で、取り急ぎ雨風をしのいで日常生活を送れるよう仮に建てられるものだ。だからスコアボードも観客席もそのままに、とりあえず高台でまとまって広い場所が確保できた町営グランドに9棟、189戸が建設された。既製品のコンテナを使うことで工期を短縮し、多層化することで戸数を増やす画期的なアイデアが採用されている。

平屋のプレハブ住宅に比べると一般の集合住宅に近い外観なので、仮設を出た人たち用の一般住宅かと思ってしまうが、2011年に建てられて6年経った今も「仮設」のままだ。

ダグアウトのベンチに座って球場跡に思いを馳せる。今ここで野球の試合は行われていないけれど、別の形で戦っている人はいるかもしれない。応援したくて来てみたけれど、どうして伝えたらいいのかわからない。

人影の見えないグランドに向かって、…照れくさいから小さな声で…、「ファイト!」と叫んでみた。

※ 女川町で最後まで残った仮設住宅は2019年3月に全戸が退去し10月から解体、2021年6月に新生町民野球場として再オープンしました