あっちとこっち #東北
宮城県石巻市鮎川浜万治下1-5 コバルト荘跡地付近
「うげっ、気持ち悪り!」思わず漏らした言葉に、前を歩いていた二人が振り向いた。
いや、嫌いじゃないよこの感じ。「やばい」が良い意味にも悪い意味にも使われるみたいな気分で言ったんだと思ってよ。モリアオガエルの卵巣に似ていて、生命の神秘みたいな感じもするよね。
はしごを登って中にはいると、壁一面を埋めつくすたくさんのカラフルなオブジェに目眩がする。モフモフとした毛に覆われたぬいぐるみやポンポン。十代の少女の部屋(というか、心の中?)に迷い込んだような気分だ。
部屋の中にはブランコが吊られている。聖と性の狭間で揺れる気持ちを抱えてブランコを揺らす少女。そんな絵が頭の中にふと浮かんだ。
開け放たれた窓の外には大自然の景色。あまりにもギャップのある中と外。どちらかと言えば中の方が居心地が良い。いつまでもこの中に閉じこもっていたい、あっちの世界には行きたくない、そんな気にもなってくる。
意を決して外に出ると、少し世界が変わって見えたような気がした。
動物の出産で、羊膜に包まれたまま赤ちゃんが出てくる映像を見たことがある。振り返ってみたツリーハウスの外観が、その羊膜に包まれているように見えた。最初に感じた「生命の神秘みたいな感じ」は、そういうことだったのか。
そこから出てきた私、Rebornしたのかな。