2017年8月23日(水)

repetition window

宮城県石巻市

repetition window

あの日、TV画面に映し出された光景は、とても現実の物とは思えなかった。東京でも激しい揺れを体感していたからこれがフィクションではないということはわかっていたけれど、たとえばこれが遠い異国の地で起こった災害や戦争であれば、少しの痛みも感じることなく見過ごしていたかもしれない。

犬島の家プロジェクトに印象的な作品(※)を残した荒神明香(こうじんはるか)が、wah document(わうどきゅめんと / 南川憲二+増井宏文)とジョイントした現代芸術活動チーム「目」の作品は、移動するお茶の間から石巻の今を見るというドキュメンタリー風のインスタレーションだ。

われわれはお茶の間で、TVやインターネットの窓を通して世界中の出来事を目にしている。リアルタイムではあるけれど、電気信号を介している分だけ、リアルから遠い。何でも見えているようで、実は何も見ていないのではないか。そんな問いを突きつけられているような思いにさせられる。

トラックの荷台に載せられた(のだろうと想像される)お茶の間は、ガタガタと揺れて居心地が悪い。それはあの日の揺れの追体験なのだろう。ガラス戸の外には、住宅の土台だけが残された復興途上の町の景色が流れていく。やがてきれいな街並みが現れてホッとするが、これはハッピーエンドで終わる復興ドキュメンタリーではない。回るルートが逆ならば、まだ復興できないのかとイライラさせられるストーリーになることだろう。ここにはドライバー(情報の送り手)というフィルターも存在している。

現地には来てみたけれど、東京のお茶の間から見ているのと何も変わることはない。所詮、ガラス越し(メディア越し)に見るだけの傍観者である限りは、われわれが現実を把握することはできないのだということを、痛感させられる体験だった。

「A邸/リフレクトゥ」「S邸/コンタクトレンズ」(2013)