椎取神社
東京都三宅村神着
土砂に埋まり、かろうじて笠木だけを地上に出した鳥居が衝撃的だ。現地に着くまでは溶岩に埋もれているのかと思っていたが、正しくは泥流によるもの。平成12年(2000)の噴火によって降った大量の火山灰が雨に流され、山肌を削る土石流となって神社を襲った。
再建された新しい鳥居をくぐる時、これが埋まるほどの泥流が襲ったのかと思ったら身震いがした。
その鳥居の前に、小さな石積みが二つ並んでいた。一般的には狛犬があるはずの場所だ。島に特有の形式なのか、もしかしたら狛犬が登場する以前の古い時代の風習が、本土では狛犬に取って代わられた後も残されている、ということなのかもしれない。
拝殿の裏にまわり森の中を進んでいくと、巨大な磐座に抱えられるようにして祀られた本殿があった。大きく迫り出した岩は、押し寄せてきた溶岩がここで止まったかのように見える。どうか荒ぶる山の神を鎮め給え。そんな島の人々の願いが込められたと思われるたくさんの御幣が、岩の下に供えられていた。