鉄砲場
東京都三宅村阿古（三宅一周道路）
火山の噴火（爆発）は一瞬だが、溶岩流はじわじわと来る。溶けた飴が流れるようにゆっくりと進むその表面は冷えて固まり、地面が動いているようにも見える。その割れ目から真っ赤な溶岩が不気味に顔を覗かせる。
溶岩の赤と黒の固まりが生きもののように集落に迫り、ゆっくりと家や自動車を呑み込んでいくニュース映像を見たことがある。進行を食い止めようと水をかけたり障害物を並べたりする人々の努力をあざ笑うかのように、真っ赤な口を開けて舌なめずりをしながら進んでくる溶岩怪獣。そんなイメージが頭に浮かぶ。
伊ヶ谷方面から山を越えて走ってきた三宅一周道路が阿古集落に入る手前に、1983年の噴火で自動車が溶岩流に呑み込まれた跡が今も残っている。崖の断面に見えている姿は原形をとどめておらず、言われなければそうとはわからないけれど、溶岩流の恐ろしさが伝わってくる生々しい痕跡だ。